• インターネットのサイバースペースなどで起こるトラブルを交渉、調停、または仲裁 などの方法によるオンライン上での解決。Online Dispute Resolutionの略語。
• E-メール、チャット、TV会議などのオンラインコミュニケーションを駆使して、現実社会で起きるトラブルや 紛争のオンライン上での解決。
• オンラインや現実の問題の、オンラインを使っての防止。
• ODRのメリットは、オンラインを駆使することで、解決にかかるコストや時間が節約できること、国境を越えた紛争や現代の多様化した問題への対応が可能になること。
全てのトラブルがODRによって、スムーズに解決できるわけではありません。やはり、訴訟と同様、そこには、向き、 不向きがあります。ここでは、ODRが比較的、適しているトラブルの例を挙げていきます。まだODRは新しい分野で下記のようなトラブル時の コストが公表されていませんので、はっきりした数字は出ていません。ただし、ODRがADRよりも安くなることは事実です。Zuckerman のリポートによると、 架空の紛争を想定して試算した場合、訴訟は、約12万ドル、仲裁は約9万5千ドル、そして、調停は1万ドルとなっています。調停が格安であるのは一目瞭然ですが、それよりもさらに ODRでの調停は安くなると考えられます。
ODRにもっとも適していないトラブルは、犯罪や暴力が関係しているケース、当時者が精神的に患っている場合、そして、当事者のいずれかが、ODRで解決する意思がない場合です。
レートによる誤差を避けるため、下記はそれぞれの国の通貨のまま記載しました。円建てに変換の場合は、概略でお考え下さい。
• 企業のトラブル:
トラブル発生は、場所を選びません。特に遠隔地の相手とのトラブルには、費用がかさみます。訴訟が起これば、その地までの旅費、宿泊滞在費、さらに、時間コストを負担しなければなりません。 特に海外にある会社と問題が起きた場合、支社が各国にあるような大企業を除いた中小企業のほとんどは自社の社員を派遣したり、 現地で弁護士を雇ったりと慣れないことを強いられます。ODRは、基本的にオンライン上で解決を目指すので、旅費や宿泊費などの費用、 また、移動や交渉にかかる時間の節約になります。
Fortune500の企業の訴訟費用は、年間2100億ドルに達し、平均3年間各ケースに費やしていると見積もられています。では、ADRの仲裁に持ち込んだ場合どのくらい の費用になるのでしょうか。2005年の資料 によれば、1万ドル訴訟額に対し、20時間の運営時間、訴訟手続きと審理あわせて総計2週間かかると想定した場合 のかかる費用は、12万ドルから20万ドルとされていました。仲裁者への支払いは、一日2200ドルが平均的なようです。このようにADRの仲裁も決して安くはありません。
eDiscoveryについては、後にIP、または、知的所有権の項目でも触れますが、現在、電子メールや電子化された情報、書類、写真などは 裁判所に証拠物件として提出しなくてはならなくなりました。これは、一見、簡単なようですが、普段から整理整頓されていないと、大変な 労力と時間が取られる作業です。社内のやり取りの頻度が多くなる大企業ほどeDiscoveryのための作業は大変になると言われています。 従業員に対する差別問題が大きく発展した米国2005年の Zubulake v. UBS Warburg のケースでは、 電子証拠書類を提出できなかったUBSは、故意に証拠を一部隠滅、提出しなかったとして、 多大な賠償金額を申し渡され、3年間続いた訴訟に終止符を打ちました。これは、UBSが故意に隠滅したかどうかというよりも、 e-メールなどの電子的連絡もすべて証拠として開示しなくてはならないという前例になりました。
海外の組織とジョイント・ベンチャー の契約を結ぶ段階でよく問題になることは、トラブル発生時にどの国の法律に基づいて、仲裁などを行うかという 点です。もちろん、誰でも自国の法律を挙げたいと思います。場所も言葉も異なる地で裁きを受けたくないのが人情です。このような時こそ、ODRを 条件にしておけば、契約もスムーズに運び、より早く前に進めます。
ODRは、訴訟と異なり当事者たちにより選択肢が与えられます。当事者も誰かに証明する必要がなく、むしろ、歩み寄りを基本としていますので、 E-discoveryのようなものは省くこともできます。ただし、仲裁の場合は、仲裁者を説得する資料が必要となるので、あらかじめ、電子的証拠、書類は 省くことに双方が同意しない限り勝手に省くことは得策ではありません。一方的に省いては、自分の立場を弱くしてしまいます。
• 離婚、子供の親権争い:
2006年5月22日付けDaily Telegraph の記事 "When Love Goes"によると、離婚率は年々世界的に増えています。 夫婦の20%は、5年以内に離婚となり、33%以上は、20年以内に離婚となる運命のようです。 オーストラリアでは、2006年時点で事務弁護士の最低時給は約180Aドルくらい、 そして、法廷弁護士に約200-300Aドル、さらに、出廷の場合は、一日約1500ー2200Aドルかかりました。 米国では、州法がさらに問題を複雑化します。特に子供の親権争いに大変時間がかかります。子供の送り迎えから、費用まで事細かに決めていきます。 近くに住んでいればそれも可能かも知れませんが、州をまたがっての交渉は大変です。そのため、親権がはっきりするまでは、 通常、離婚を申請した州から出ることもままなりません。訴訟費用には、相談費用から、書類の準備、また、裁判所申請費用も含みます。 米国の場合、大体、離婚弁護士は、時給約350ドルかかります。ケースによりますが、子供もなく、シンプルなケースは、両者で約1万ドル、 そして、子供や遺産問題を含む複雑なケースの場合、22万ドルといわれています。 顔を合わせての調停にした場合、調停者は、時給$150-310ドルが相場です。それが、顔を合わせないで済むオンラインになれば、さらにコストが低くなります。
国際結婚では、勝手に子供を連れて出身国に帰国してしまうケースなどもあり、一方が泣き寝入りするパターンも多くなっています。 ODRは、オンライン上で話合いができるため、相手と連絡も取りやすくなります。• スポーツ紛争:
国際的なスポーツの紛争は、すでに仲裁で解決されることが多いです。特に、審査員により採点法で優劣を決定するような体操 やフィギュアスケートなどは、審査員の価値観などに左右されるため、決定的な判断にはなりにくく、トラブルが生じやすいのが現状です。国際的に活躍する選手の 多いこの頃、オンラインのコミュニケーションを駆使することによって、紛争のコストを下げることが可能です。
一方、インターネットにスポーツ関係のサイトも無数にあり、ドメイン名の争いも多くなりました。"world cup”というドメイン名を他のサイトが 使用しているということで、FIFAが訴えたケースも世界知的所有権機関(WIPO) の仲裁手続きに則り、オンライン上で速やかに解決されました。 この他にも、NikeやUEFAのドメイン名争いの解決など、インターネット上のトラブルに適応できるODRはすでに役立っています。
• IP関係
国をまたがる特許関係の争いは、どの国の法律が基となるかで大きく異なります。もし、米国で裁判が行われると、必ずしも分野の知識 があるとは言えない陪審員たちによって裁かれます。2001年度の時点で、訴訟費用は、約300万ドルだったものが、2003年には、約400万ドル、そして、2005年には、450万ドル にもなりました。その上"アメリカンルール”というものがあって、弁護士費用は賠償金の対象になりません。つまり、弁護士費用はそれぞれの懐から出て行くことを 覚悟しておかなければなりません。ちなみに、米国では、毎年2500件以上の特許訴訟がファイルされ、ファイルするまでに2年間かかるのが平均です。
eDiscovery、つまり電子的資料は古くまでさかのぼって開示を行います。膨大な量の電子メールや電子化した書類の中から、 その特許紛争に関係するものだけを選び出していきます。会社では、これに係る顧問弁護士の勤務時間は長くなり、 そのため法廷弁護士費用もかさみます。 ODRは、開示が必須ではなく、当事者同士の意向に基づいたルールで進みます。また一方、電子資料提出が求められても、オンラインでのコミュニケーションが主です ので、電子化された情報の取り扱いは簡単にでき、時間と費用を抑えることができます。
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